『劇画ヒットラー』
『劇画ヒットラー』水木しげる ちくま文庫
ヒットラー、というと20世紀の最低人間の一人、20世紀が生んだ最悪の人間、という印象があるし、あのユダヤ人や少数民族などの虐殺のことを思えば、「生まれてこない方が良かった」という人であろうとは思う。
でも、そのあまりのむごたらしい行為のことがあっても、あれだけドイツを熱狂させ、世界中の人々に一時的に出あれ、信者を作ったこと。それまでの彼の半生の特異さ。ユニークという括り方をするわけにはいけないのだが、しかし非常に特異な存在であることは否定できない。
本書のはじめは弾圧されたユダヤ人からはじまり、結末もまたヒットラーがドイツに与えた「千年王国」の姿、という悲劇で終わるのだが、本編は決してヒットラーを極悪人として描こうとはしていない。
どちらかというと、人間ではなく、妖怪、として描かれている印象が強い。彼の書く南方熊楠なんかもそうなんだけど、本書もまたヒットラーを「変人、いや妖怪」という感じである種ユーモラスに描く。南方で片腕を失った水木さんだけど、どこまでも彼の人間を見つめる目は優しい。そんな括り方はあまりに短絡的過ぎるかもしれないが。
もう1つ、面白いな、と思うのは「普通のマンガ」というと背景をシンプルに、主要人物の描き込みを強調して、というものが種だと思う。しかし、水木さんはむしろ、主要人物の方が線がシンプル。そんなことをみるもりさんに言うと、「ガロ的じゃない?つげさんもそうじゃない?」と言われ、なるほど、と納得。水木さんはガロじゃないけど、でもそういう時代、なのか、そういう人たち、なのか。でもそういうことだね。
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コメント
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I do enjoy the way you have framed this specificdifficulty and it does provide me personally some fodder for consideration. However, through what precisely I have personally seen, I simply trust as other opinions stack on that individuals keep on issue and not get started upon a tirade associated with some other news du jour. Still, thank you for this superb point and though I can not go along with it in totality, I respect your point of view.
投稿: Savannah | 2014-01-22 06:26