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2009-03-23

よしながふみについて。

『西洋骨董洋菓子店』で読み出した氏。きっかけが友人から、登場するゲイの天才パティシエが私によく似ている、という一言だったので、ちょっといわゆる他の漫画ときっかけが違う。
氏の現在の連載作『きのう何食べた?』は青年誌でゲイを扱った意欲作だが主題は家庭料理。主人公の四十にしてハンサム若作りの弁護士は値段にもしっかり目がいき、丁寧に下ごしらえもして、味、栄養バランスも考えたご飯を作る。
しかし。
なんでか彼女の描く料理はいつもおいしそうに見えない。
これは多分に解説がくどいところに原因がある。「これ、AがBしているのになんでCなの!?」とか、「DがEでFでG!」とか。作るときも、「HをIしてJする。その間にJをKしてLしてM。そうそう、冷蔵庫にNがあるけどそろそろ傷んでくるからOしてP。」とか。
個人的に好きな料理の描写が、
「おや?」ふっと、声が出る。「どうした?」「妙にこの味噌汁はうまいね」「何、ごまの油を少しね」「なるほど、それで…」「疲れてるときは、こいつ、うまいもんだよ」(池波正太郎『仕掛人梅安』よりうろ覚え引用)なんてのだから、明らかに違う。しかも、『きのう何食べた?』では、だしをだしの素に頼ってる。これがまた気に入らない。あれだけなんやかやと細かい下ごしらえをしながら、だしはそれでええんかい、と。だしをとることなんてそんな手間では無いではないか、と。しかし、くどくどと文句を並べたが、料理などしたこともない中高生にしてみると新鮮で、これを読んで、料理に興味を持った人もいるやもしれぬ。
また、私にとって氏の漫画は料理に魅力があるのではない。さりげない描写。彼女の観察眼を活かした表現にこそ、彼女の作品の良さがある。
例えば、といって出てくる例が微妙なのだが、パティシエを目指す元天才ボクサーが突然棲み家を失い、元彼女の部屋に泊めてもらう。数日後、新しい部屋が見つかった彼に彼女が、「1度も私のこと抱かなかったね。くたびれた看護婦なんてもう興味無い?」と聞くと、「何言ってるの?今の方がおまえのこと好きだぜ?」と返す(セリフはうろ覚え)。そのあと何も言わないけどとても優しい顔の彼女の一コマ。あるいは、友人がゲイだと知り、さんざかゲイをネタにした漫画を描いてきたYなががその友人に謝ったときに彼が返したひとこと(何を言ったかは忘れた)へのYながの一コマ(『愛がなくても喰ってゆけます』)。
こういう描写がなんだか私は好きなのである。
ゲイにせよ、食べ物にせよ、どちらも作品の「小道具」だと思う。それはどんな漫画でも同じことで、人間、あるいは人間以外の何かでもキャラクターがいるかぎり、大切なのはその人間性やキャラクター同士の物語である。どれだけ小道具に優れていても、その点において、描けていない作品はあまり私は好きではない。よしながふみ氏の場合はあまりに小道具のアクが強い面もあるがだが、やはり彼女の描く人間ドラマはなかなかにおもしろく魅力的である。
先日来読み直していた昔大好きだった某作品が小道具にこだわってる割りには人間ドラマが描けていないこととの落差には複雑なものが感じられるわけだけれど。

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コメント

ググってみたらアニメ化されていて、
今度映画化されるんですね…

落胆した作品ってのが何なのかが気になりますw

かなり前にはドラマ化もされたんです。ゲイ色は無かったですが。失望した作品のことはまたの機会に。

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