『雪国』
川端康成 新潮文庫
この間、氏の作品の翻訳者・サーデンステッカー氏が亡くなった。
読売新聞の記事で川端氏がノーベル賞を受賞した際に、翻訳者の功績が半分
はある、と述べたと記述されていてふとなんとなく『雪国』を読みたくなる。
いわゆる「名作」と呼ばれるものを特に忌避していたため、まさにいまさら。
解説の伊藤整が抒情小説である、と述べているがまさに。
こんな本、私が小学生の頃に読んでもいったいなんだかよくわかんなかった
だろうことは間違いない。しかし実に叙情的。美しい本だと思う。
ただストーリーそのものは、男性特有のご都合主義に彩られたファンタジーの
ような気がしてならない。村上春樹の小説にその点、通ずるものを感じる。
駒子はとても美しいけど、こんな女性はそうそういない気がするし、こんな
関係性もどうかと思う。女性からすればちゃんちゃらおかしいんじゃないかと
思うけど、そんなちゃんちゃらおかしい女性を描く男をかわいいと思っていそうな
気もしなくもない。
裏表紙に「冷たいほどにすんだ島村の心の鏡」という言葉があるが、そんな
崇高なものでもなく、単に社会性の育っていない子供っぽい男のような気もする。
あとこれは完全に個人的な思いだが、村上春樹『ダンス・ダンス・ダンス』の中に
ユミヨシさんが「僕」の泊まっている部屋に来るシーンがあるが、なんとなく、
この小説のシチュエーションが似てるなあ、と思う。こういうのも男の願望だろうか?
とまあ、ストーリーの骨格自体は客観的にはどうもどうかと思うけど、でも
きれいで、おもしろかった。
余談だが、サイデンステッカー氏のwikipediaの解説がである調とですます調が
混ざり合ってて不思議。
エドワード・G・サイデンステッカー -wikipedia
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コメント
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Very good information - thanks!
投稿: London | 2014-01-23 03:25