『【新釈】走れメロス他4篇』
森見登美彦 祥伝社
あろうことか、山本周五郎賞もおとりあそばされた森見登美彦氏。
なんと、なんとといった感じで驚き。
何せあの夢か現かも境界線の危うい独特の物語を展開される氏の作品が
かの「山本周五郎」の名前の冠された賞の対象になられるというのだから。
さて、遅まきながら氏の『走れメロス他4篇』を読んでみた。
走れメロスの他、山月記、藪の中、桜の森の満開の下、百物語を新釈されていた。
私の中での順位は、桜の森の満開の下・走れメロス・山月記・藪の中・百物語と
いったところだろうか。特に桜の森の満開の下。実に良い。『きつねのはなし』の
中でも垣間見ることのできた氏の独特の静謐な筆致が、ここでも発揮されておられ
さらにそれが実に叙情的な趣きを生み出している。
森見登美彦氏というと、どうしても京都の某超々一流大学に籍を置きながらも
不毛な日々を送る阿呆な学生の姿を勢いのある筆致で描くことが特徴と思われ
がちだが、そんな氏が時折見せるこの静謐な文章というのが素晴らしく良く、
『きつねのはなし』でそれを知って後、氏への畏敬の念をますます強めることとなった。
名作の入り口にでもなれば、といったことを氏はあとがきで書かれているが、
小難しい便覧や教科書で名作に触れるより、むしろこの本自体を必読参考書と
して、小学校で配布すれば、子どもたちの本離れも少しはよくなるのではないか
と思う。私もまだ恥ずかしながら手を出していない坂口安吾にふと手をのばして
みたくなった次第である。
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コメント
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